この仕事に入ったきっかけ
「オーダー靴は高価だから、自分で作れたらいいな」という単純な理由から靴作りに興味を持ちましたが、初めて靴を作った際、すぐに「オーダー靴がなぜ高いのか」を理解するほど、その複雑な工程に圧倒されました。作業を進める中で靴づくりの工程にたくさんの先人たちの知恵が隠されていることに気づき、それに感動するうちにすっかり靴作りに魅了されました。しかし、出来上がった靴は見栄えもさることながら機能的にも全く不十分で、歩きやすさとは程遠いものでした。この経験から「足と健康」への関心が高まり、「足に優しい靴とは何か」を追求するうち、ついにはドイツで整形靴を学ぶ道へと進むこととなりました。
起業した理由
ドイツでは足の健康が非常に重視されており、自分に合った靴やインソールを作ることが一般的です。実際、整形靴やインソールの制作は多くの部分が健康保険でカバーされるほど医療制度が整っており、「足から健康を考える」という概念が広く浸透しています。残念ながら日本ではまだ足の健康がそれほど重視されておらず、「痛みを我慢して靴を履く」という人も少なくありません。私はドイツで学んだ整形靴の知識と技術を活かし、WALの製品を通じて、日本の皆様の「足から始める健康づくり」に貢献したいと考え、日本で起業を決意しました。 「WAL(ヴァル)」というブランド名は、整形靴の師匠であるWalter(ヴァルター)さんに由来しています。ドイツ整形靴の魅力を気軽に体験していただけるよう、覚えやすい名前を選びました。足の不具合を感じた際に思い出していただけると嬉しいです。
なぜ今、浅草にいるのですか?
帰国後の拠点を探していた際に、ここ「浅草ものづくり工房」の公募を見つけたことがきっかけです。全国に創業支援施設は多くありますが作業スペースが確保できる施設は少なく、その中でもここは靴作りに必要な機材が充実しており作家にとって全国でもトップクラスの環境だと思います。奥浅草と呼ばれるこの地域には同業者が多く集まっており、まさにものづくりの街です。私もこの歴史の一端を紡いでいけたら嬉しく思います。
死ぬまでに作りたい!あなたの逸品を教えてください
眼鏡が視力矯正具からファッションアイテムへと進化し広く受け入れられたように、整形靴も義肢装具の枠を超え、より日常的に使われ生活に溶け込む存在になることが可能だと考えています。整形靴の魅力と技術を詰め込みながら、それと気づかれないフットウェアを作ることが、私の目標です。