新橋二丁目七番地

JR新橋駅前のSL広場=新橋二丁目七番地で1971(昭和46)年以来40年以上にわたって靴磨き一筋に生きてきたおばあちゃん、中村幸子さんの人生と仕事ぶりのルポ+インタビューを、新聞記者としてその姿を長年にわたって見続けてきた佐藤史朗さんが一冊にまとめた本(ソフトバンククリエイティブ発行)。一家離散、家出、不倫、破れた靴職人との結婚生活、身体が悪い二度目の主人と5人の子供をかかえてリヤカー引きの野菜売り生活、そしてたどり着いた路上靴磨き生活—–1931年生まれの靴磨きばあちゃんの壮絶な人生。そして、雨の日も雪の日も、3.11の大地震の直後であっても、朝から晩まで地べたに座り、ひたすら靴を磨き続け、お客であるサラリーマンや商店主などを時に励まし、力づける仕事振り。下手なドラマよりドラマチックで、胸を打たれる。欲を言えば、もう少し周辺取材や時代・社会変遷の関連記事が充実していれば出色のルポルタージュになったとは思う。新橋とサラリーマンの変化、路上営業の靴磨きは一代限りの認可で、しかも新たな認可は現在(多分、今後も)行われないことや、靴にこだわる若者の靴磨き意識など、サブテーマはいろいろある。
もっとも、この本に先行して2012年の春に、靴磨きばあちゃん、中村さんの姿を歌にした「新橋二丁目七番地」というCDがテイチクから発売(歌・あさみちゆき)され、サラリーマンなどの間で話題になっている。多分にそのヒットに影響された内容構成ということであろうから、それは無理な注文かな。