手作り革靴の本 / 3月15日は「靴の日」/ 横浜そごうイベント

手作り革靴の本

文堂新光社から発行された「手作り革靴の本」に、工房からも千阪実木(靴づくり屋chisaka)が8ページにわたって紹介されている。10数人の靴および革製品の製作者の行き方、考え方、そして工房や商品を写真中心に紹介する本で、最近流行の”手作りライフスタイル本”の一種だが、靴・革・雑貨系ものづくり人間には楽しく、参考になる内容だ。売れ行きも好調のようで、この5月ぐらいには第2弾的なものが発行されるとか。それにも、工房から安田裕嗣(プラスアロー)などが登場予定。おたのしみに。

3月15日は「靴の日」

3月15日は、靴の日。1870(明治3)年のこの日、東京・築地入舟町に日本で始めての靴工場「伊勢勝造靴所」が開設された。日本の靴作り、靴産業のスタートである。そして1932年、東京靴同業組合が3月15日を「靴の記念日」に制定。現在でも、神田にある日本靴連盟に業界の重鎮が集い式典が行われ、”日本の靴”の始祖である西村勝三の遺徳を偲んでいる。

11日の震災メモリアルデーと14日のホワイトデーに世間一般の耳目はどうしても奪われてしまうけど、せめて”東京・下町・浅草・靴”にかかわる人だけでも、3月10日の東京大空襲の日と15日の「靴の記念日」はしっかりと記憶にとどめておいて欲しいもの。誕生日を祝い、自らのルーツを知り、家族友人やふるさとに感謝したりするのと同様に、仕事・産業の由来を知り、先人に感謝し、歴史に学ぶことは、間違いなく仕事の未来を拓くことに繋がるのだから。

ホブソンの婿選び

今日17日から24日まで、銀座の劇場、ル・テアトル銀座で「ホブソンの婿選び」が上演される。仲代達矢が主宰する無名塾の公演ということで、演劇好きの人はお待ち兼ねだったかも。でも、この戯曲を見ておくべきは、むしろ靴好き、靴作りに携わる人かも知れない。
舞台は19世紀のイギリス。主人公は酒飲みで頑固な靴屋の主人ホブソン。そして靴職人との結婚を望む長女マギーをはじめとした結婚適齢期の3人の娘たち。そこで繰り広げられる笑いと人情のドラマはケッサクで、映画になったり、日本でも昭和30年代以降さかんに新劇公演(外題は、マギーの結婚)されている。
特に映画は「アラビアのロレンス」の監督、デヴィッド・リーンの初期の傑作として名高いが、靴屋的視点で見ても、1階が店で、地下に製作工房がある昔の靴屋のたたずまい、ハンドメイドの製作の様子、職人気質など、見所いっぱい。極めつけは、ホブソン親爺の決め台詞。「口先だけで金を稼ぎ、人の心をまどわす弁護士などとは違い、靴屋は誇り高き商売だ。腕と技術で靴(という素晴らしいもの)を作り、人様と世の中の役に立っている!」。靴映画史に残る名台詞である。
そんな靴ドラマを、仲代無名塾はどう演出するのか。要チェック。

横浜そごうイベント

横浜そごうの婦人靴売場で、3月13日~26日の2週間、6組7人の女性デザイナー&製作者によるクリエイターズフェアが行われている。昨年9月に続く2回目の開催で、前回同様好評・好調、早くも第3回目を今年9月に行うことが予定されているほど。
従来の百貨店には無い新鮮で、楽しい商品と売場を、意欲溢れる新人・若手にチャンスを与えることで形作り、お互いのステップアップに結び付けたい。そんな基本発想を反映して、参加クリエイターは販売在庫を持たず、売上げノルマもナシ。受注から2~3ヶ月後までに製作・納品するオーダーも可能という方式が、実績や資本の無い新人・若手の参加を促し、結果、それ相応の売上げを達成するなどの成果をあげている。今後、そごう・西武グループの他の店舗での展開、また、靴以外にもバッグ、アクセサリーなど雑貨全般のクリエイタズーフェアの企画も浮上しそうな勢いだ。
浅草ものづくり工房をはじめ、靴や皮革製品作りに励む次世代クリエイターにとって、横浜そごう婦人靴売場が登竜門的な存在になっていくことを期待したい。

卒業シーズン

3月は卒業シーズン。東京や大阪などの就学期間1年以上の靴学校・教室でも卒業制作展や卒業式が各所で行われている。ヒコみづの、文化服装、エスペランサ、台東分校、サルワカ、上田安子、三田校、阪神ファッション—-主だったところだけでも、ざっと200人からの卒業生=新社会人=新靴業界人(予備軍)を輩出したことになる。この流れは90年代半ば頃から始まり、2005年前後からは現在と同様の靴学生数になっている。ということは、ここ10年で少なくても2000人規模の靴関連若手仕事人が増えたことになるのだが、業界は一向に若々しくもならず、活気付きもしない。独立自営志向の人が増えているとはいうものの、新たな職業・業態の確立もマーケットの認知・獲得も、まだまだ道遠し。そんな先行きの不透明さを感じ取ってか、今年も含め近年の靴学生は、旅立ちの希望より、旅立ちの不安を色濃くにじませている。何とかしなくては—。

スカイツリー・ビューポイント

冬の間、あちこち工事をしていた隅田公園がお花見シーズンを前に新装開園。そこで、久しぶりに散歩してみたら、東武線と言問橋の間に見慣れぬ階段が。そして、その向こうには”下町の太陽”ならぬ新たな”下町のシンボル”の姿—–東西南北、遠近上下、どこから見ても楽しめるスカイツリーだが、もっとも絵になるのは川と緑に囲まれて広い空をバックに屹立する姿がながめられるココが一番!ということでつくられたスカイツリー・ビューポイント・イン・墨田公園、とか。これからの季節、人力車やカメラ片手の観光客がわんさか集まるスポットになりそうだ。
となると、この階段スポットと目と鼻の先のリバーサイドギャラリーで、4月26日~30日の5日間行われる第5回モノステージは、ここからのお客の導入・動員もアリなわけで、スカイツリー効果が楽しみ、楽しみ。